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東京地方裁判所 昭和25年(ワ)1188号 判決

原告 笠島キヤウ 外八名

被告 東京都

一、主  文

被告は、原告キヤウに対して金十二万三千二百九十八円五十銭、同喜代に対して金一万五百五十円、同美絵子、同信和、同義和、同佐絵子に対して各金五千二百七十五円、同重勝、同勝典、同千秋に対して各金三万千六百五十円、及び右各金員に対する昭和二十五年三月十九日以降完済まで年五分の割合の金員を支払え。

原告等のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告等訴訟代理人は被告は原告キヤウに対し金四十七万三千二百九十八円五十銭、同喜代に対し金十三万三千八百八十三円、同美絵子、同信和、同義和、同佐絵子に対し各金六万六千九百四十一円五十銭、同重勝、同勝典、同千秋に対し各金二十五万千六百五十円及び右各金員に対する昭和二十五年三月十九日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とするとの判決並に仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、

(一)  被告は、東京都の特別区の存する区域の自治体警察を維持し、その費用を負担して、その運営管理に当るものであるが、訴外梅津治次は昭和二十一年四月東京都警視庁巡査に任せられ大森警察署に勤務し、その職務に従事中昭和二十三年三月三十一日警察官の制服制帽を着し、実包装填の十四年式拳銃を携帯し、神奈川県国鉄川崎駅ホームで、笠島勝次郎を呼止め、同駅長室にて不審尋問を行い所持品等の検査をなし、その際予め用意の金三百円入封筒をひそかに右所持品の中にまぎれ込ませたうえ、その出所を追及し、「スリ」の嫌疑ありとして同駅前巡査派出所に連行し、勝次郎の所持せる現金九千九百円外雑品数点を証拠品として受取つた上同所を出て連行途中、同日正午頃川崎市東一丁目二十九番地先共同便所内で用便中の勝次郎の隙を見て右預り品を持ち逃げしようとしたところ、勝次郎が、「泥棒」と呼んだので、梅津は所持の拳銃で実包一発を勝次郎の背後から発射し同人の腰部から腹部に貫通する銃創を負わせた上前記の金品を携帯逃走して強奪し、間もなく勝次郎は同日午後一時十五分頃同市新川通川崎病院にて右貫通銃創による腹膜内出血により死亡するに致つた。

梅津巡査の右所為は公共団体である被告東京都の公権力の行使に当る公務員がその職務を行うについて故意に他人に損害を加えた場合に該当するものであるから、国家賠償法により被告はこれが、賠償をなすべき責任がある。

(二)  勝次郎は明治九年四月二日生れで、明治三十七年東京帝国大学工科大学機械科を卒業し、横浜電線製造株式会社、古河電気工業株式会社の主要な地位を経て、昭和十一年二月昭和電線電纜株式会社に転じ昭和十七年五月同会社常務取締役となり、同十八年七月辞任し、事件当時は同会社顧問の地位にあり、財産としては横須加市秋谷四千四百二十七番地宅地六百七十一坪六合五勺並に同地上に木造瓦葺二階建一棟、此建坪五十五坪六合、家具什器有価証券等を有し且健康体であつて、原告等の夫或は父として物質的及び精神的生活の中心をなし中流の生活を営んでいた。

(三)  原告キヤウは明治二十年十一月十四日生れで、女子学習院を卒業し、明治四十年勝次郎と結婚し、長男笠島和介、二男原告重勝、三男同勝典、四男同千秋を挙げ、専ら勝次郎の収入によつて生活を営んでいたが、勝次郎の突然の死により、その物質上精神上の支柱を奪われ、全くの窮状に陥つたものでその苦悩は甚大である。その精神上の苦痛に対する慰藉料として右諸般の事情を考慮して金四十五万円を相当とし、なお勝次郎の葬儀費用として一万九千九百九十八円五十銭を支出した。

而して勝次郎は前記のように所持金を強奪されたので、その損害賠償債権については、原告キヤウ、笠島和介、原告重勝、同勝典、同千秋において共同相続をなしたので、法定相続分は三分の一の三千三百円となるので、被告に対して以上合計四十七万三千二百九十八円五十銭及び之に対する訴状送達の日の翌日である昭和二十五年三月十九日以降民事法定利率年五分の割合の遅延損害金の支払を求める。

(四)  亡笠島和介(明治四十一年七月四日生)は昭和九年三月東京帝国大学農学部を卒業し茨城県農林技手、東大助手等を経て父死亡当時神奈川県立相原農産学校教諭の職にあり、後昭和二十四年一月休職となり、その家族は妻原告喜代、長女原告美絵子、長男同信和、二男同義和、二女同佐絵子を抱え、勝次郎から物質上の援助をうけていたのである。然して勝次郎の突然の死によつて唯一の家計の援助者を失い重大な精神的苦痛を蒙つた。そこでその慰藉料として諸般の事情から金四十万円を相当とし、なお前記九千九百円の相続分である六分の一の千六百五十円の損害賠償債権を有しその合計四十万千六百五十円のところ、昭和二十五年五月十八日死亡しその妻原告喜代、長女同美絵子、長男同信和、二男同義和、二女同佐絵子が、共同相続をしたので、法定相続分により原告喜代は三分の一の金十三万三千八百八十三円、同美絵子、同信和、同義和、同佐絵子は各六分の一の金六万六千九百四十一円五十銭の債権を有するので右各金員と、これに対する訴状送達の日の翌日である昭和二十五年三月十九日以降民事法定利率年五分の割合の遅延損害金の支払を求める。

(五)  原告重勝(明治四十五年一月一日生)は昭和十一年三月京都帝国大学法学部を卒業し古河電気工業株式会社を経て東京芝浦電気株式会社に勤務し、前記事故当時月収一万二千円を有し、原告勝典(大正四年十二月十八日生)は昭和十二年三月早稲田大学を卒業し、日本ビクター株式会社東京営業所副所長の職にありて月給一万二千円の支給を受け、原告千秋(大正十一年十月十日生)は昭和二十二年十二月医師国家試験に合格し東京大学医学部に勤務するものであるが、右原告三名は父勝次郎の急死によつて精神上甚大な苦痛をうけたのでこれを慰藉するため各々金二十五万円の支払を受けるのが相当であり、なお前記金九千九百円の法定相続分である金千六百五十円との各合計二十五万千六百五十円及び之に対する訴状送達の日の翌日である昭和二十五年三月十九日以降民事法定利率年五分の割合の遅延損害金の支払を求めると述べ、被告の主張に対して、警察法第五十七条は自治体警察はその管轄に属する区域の境界外五百米以内の地域においても職権を行うことができる旨規定しているのであるが、本件事故の発生した共同便所附近は東京都と川崎市との境界線より百米の地点にあるので、東京都自治体警察は右地域においても職権を行うことができると述べた。<立証省略>

被告訴訟代理人は原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として、

原告主張の第一の事実中被告か東京都の特別区の存する区域の自治体警察を維持し、その費用を負担してその運営管理に当るものであること、梅津治次がその主張の通り東京都警視庁巡査に任命せられ大森警察署に勤務していたこと、その主張の日に同巡査が警察官の制服制帽を着し、実包装填の十四年式拳銃を携帯し、川崎ホームで笠島勝次郎を呼び止め駅事務所で所持品を調べその主張の通り不審の点あるとして、同駅前巡査派出所に連行し、勝次郎の所持する現金九千九百円外雑品数点を預ると称して受け取り、途中国家警察川崎地区署に立寄り、その間預り品を持ち逃げしようとしたこと並に同巡査が原告主張の日時場所で勝次郎を死に致したことは認めるがその余の事実は認めない。

同巡査が勝次郎を死に致したのはその職務を行うについてなしたものではないからこれについて、被告は賠償責任を負う理由はない。

第二以下の事実については原告等及び笠島和介の各身分関係の点及び相続と相続分の点は認めるがその余の事実は認めない。

梅津は中風の母を擁し、その生活費と療養費を送金する必要に迫られていたが、その余裕がなかつたので、この費用を獲得し母に孝養を尽すためには罪を犯しても止むを得ないとの誤つた信念を抱き、強盗等の犯行により金銭を入手しようと企図し、先ず脅迫に用いるために拳銃の入手を思い立ち昭和二十三年二月十八日頃大森警察署池上派出所勤務藤本巡査の保管所持する原告主張の拳銃を窃取し、次いで非番の時間を利用し、私服で拳銃を所持していては見知らぬ警察官に不実尋問される恐れがあるので制服を着用し、所持品検査の際に不審の原因を作り出すため、所持の封筒に自己所有の三百円(百円札三枚)を入れて所持し、所謂籠抜詐欺の方法で金員の領得を計画し、自己の職務管轄区域外である川崎市に到り、帝国銀行川崎支店附近で現金を所持する者を物色して追尾し川崎駅ホームで勝次郎を呼び止め国家警察の職員であると告げ、駅事務所で所持品検査の際前記三百円入封筒を秘にその所持品の中に入れて不審の原因を故意に作り出し、次で川崎駅前派出所に連行し、右所持品を預ると称して受取り、持ち逃げを図つたが、その機会を得なかつたので遂に勝次郎を死に致したものであつて、当初より計画的に犯罪を敢行したのに外なならず、全く職務執行とは無関係であると述べた。<立証省略>

三、理  由

(一)  被告が東京都の特別区の存する区域の自治体警察を維持し、その費用を負担して運営管理に当る公共団体であること、訴外梅津治次が昭和二十一年四月東京都警視庁巡査に任ぜられ大森警察署に勤務し、昭和二十三年三月三十一日当時その職務に従事していたこと、同日同巡査が制服制帽を着し実包装填の十四年式拳銃を携帯し、神奈川県国鉄川崎駅ホームで笠島勝次郎を呼止め、駅事務所で所持品の検査をなし、その際予め用意した金三百円入りの封筒を秘に右所持品の中にまぎれ込ませたうえ、不審の原因を作り「スリ」の容疑をかけて同駅前巡査派出所に連行し、勝次郎の所持する現金九千九百円外雑品数点を預ると称して受取り、同所を出て連行途中右預品を携帯逃走しようとしたこと、並に同巡査が勝次郎を同日午後一時十五分頃同市川崎病院で死亡させたことは当事者間に争がなく、梅津巡査が勝次郎を川崎駅長室に連行して不審尋問を行い、更に勝次郎所有の現金九千九百円等を犯罪の証拠品として預り、これを不法に領得したこと並に原告主張通りの経緯によつて梅津は勝次郎に拳銃を発射し、これがためその主張通りの死因によつて同人を死に致したことは成立に争ない甲第十、第十三号証(梅津に対する聴取書)、同第十五号証(鑑定書)の記載により認めることができる。

(二)  よつて梅津巡査の右行為が自治体警察の公権力の行使として職務上行われたものであるかどうかの点を判断する。

右事実によれば梅津巡査は自己の職務権限に基いて笠島勝次郎に対して不審尋問をなし、巡査派出所に同行を求め、同人の所持する金品を預つたものに外ならないから、自治体警察の公権力の行使として一応職務上行われたものというべきである。

被告は梅津巡査は非番の時間を利用して右の行為をなしたものであるから職務執行に当らないと主張し、成立に争ない甲第一号証(公判調書)の記載と証人町田[由頁]夫の証言によれば、梅津巡査は当時大森警察署海岸通り派出所に勤務し、同所の勤務割は午後五時から翌朝午前九時まで勤務したとき(第二当番)はこれを終えて自宅に帰り休息する定となつていて、前記事故当日同巡査は第二当番を終つて休息すべき日に当つていたことを認めることができる。

然しながら右にいう非番の時間は現実の職務に従事しないで休息を許容されているに止まり、一般の職務執行権限を奪われたものと解することはできないから被告の右主張は理由がない。

次に被告は梅津巡査は職務管轄区域外で右行為をなしたのであるから職務執行とはならない旨主張するけれども、警察法第五十七条によれば、自治体警察はその管轄に属する区域の境界外五百米以内の地域においても職権を行うことができるのであつて、梅津巡査が勝次郎を連行中本件事故を発生させた共同便所附近は東京都と川崎市との境界線より五百米以内の地点にあることは証人町田[由頁]夫の証言と、正しく作成されたものと認むべき甲第十七号証の記載によつて認めることができるから、たとい梅津巡査のなした前記行為の内の一部分の行動場所が右境界線の五百米以外に及んでいたとしても、一連の行為として管轄区域内の行為と認むべきである。

更に被告は梅津巡査は当初から職務執行の意思なく、名を不審尋問に藉り、他人の金品を不法に領得する目的で前記の所為に出たものであるから職務執行行為とはいえないと主張し、成立に争のない甲第一号証の記載と前記争のない事実を総合すれば、梅津巡査は持病の中風に悩む実母から医療費、生活費の仕送を依頼せられたけれども、自己が同僚に代つて受取つた給料を使い込んでその返済に窮していて、自からも生活に困り到底実母えの仕送りができない状況に在つたので、拳銃を入手して悪事を働き急場の苦境を切り抜けようと考え、昭和二十三年二月十八日頃大森警察署池上派出所勤務の藤本巡査保管の本件の拳銃及び実包五発を窃取した後通行人に対して不審尋問を行い、その所持品を証拠品名義で取得することを思い立ち、同年三月三十一日前記の通り警察官の制服、制帽、外套を着用し実砲を装填した右拳銃を外套のポケツトに携行して川崎市に到り、たまたま笠島勝次郎(当時七十三歳)が買物の際多額の札束を所持しているのを知り同人の後を追つて川崎駅ホームで不審尋問をなし、前記の通り同人に「スリ」の嫌疑をかけて、同駅前派出所に連行し、同人から前記の通り金品を手交させた上右派出所を出て同行しながら持逃をするに適当な機会を窮つていたけれども、笠島が警戒心を起したため、容易にその目的を遂げなかつたが、前記の通り共同便所内で用便中の同人の隙を窮つて逃走しようとしたところ、同人から「泥棒」と大声で連呼せられたため、この上は同人を殺害して前記の金品を強奪する外ないと考え、所携の拳銃により実砲一発を発射し、同人に命中させて金品領得の目的を遂げ、間もなく同人を死に致したことを認めることができる。

右の事実によれば、梅津巡査は当初から金品を不正に領得する目的で、笠島に対して不審尋問をなし、これを連行し証拠品として同人から金品を預り結局右の目的を遂げたものであつて、公務員が外観上の職務執行を装いその職権を濫用して不法行為をなした場合に該当する。

然しながら公務員がこのように職権を濫用した場合であつても、その行為を客観的に考察して不審尋問、連行並に所持品の領置が外観上一応適法な職務執行行為と見ることができるのであるから、たといその行為者が主観的に正当な職務執行の意思に基かず不正の目的の下にこれをなし、実質的には法律の許さない不法のものであつても、国家賠償法にいわゆる公務員の職務執行行為たるを失わないものと解するのが至当と考える。

蓋し公務員の職権濫用若しくは仮装の職務執行等の行為は、従来職務執行行為に該当しないものと解する傾向にあつたことは否めないけれども、この考え方をそのまま同法にいわゆる職務執行行為に当て嵌めることは憲法第十七条の規定に基いて新に制定された国家賠償法が国家又は公共団体の賠償責任を認め被害者保護の実を挙げようとする立法趣旨に適応しないであらう。

果して然らば梅津巡査が勝次郎所有の現金九千九百円を領得した行為は同法にいう公務員が職務執行上故意によつて違法に損害を加えた場合に該当するから、被告は被害者にその賠償をなすべき義務あるものというべきである。

ところで梅津巡査が故意に勝次郎を殺害した行為は職務執行に際してこれと無関係になしたものではないかとの疑がないことはない。

然しながら前記の通り金員の領置が職務執行に該当し、その不法領得が職務執行上なされたものであるから、この不法領得の目的達成の手段としてなされた前記拳銃の発射は不法領得と密接不可分の関係にあつて、両者は法律上の一箇の行為に包含せられるものと解するのが相当である。

されば梅津巡査が故意に拳銃を発射して勝次郎を殺害した行為も、同法にいう職務執行についてなしたものといわざるを得ない。

従つて被告はこの不法行為によつて被害者に生じた損害をも賠償すべき義務を負うべきである。

(三)  よつて慰藉料の点を判断する。

原告キヤウ、笠島和介、原告重勝、同勝典、同千秋等と笠島勝次郎との身分関係が原告主張の通りであることは被告の争はないところであるから、これ等の者が夫であり又は父である勝次郎の死亡によつて精神的に甚大な苦痛を受けたことは推察するに余あるところ成立に争ない甲第一号証、原告キヤウ、勝典各本人尋問の結果によれば、勝次郎は明治九年四月二日生れで東京大学工学部を卒業し、横浜電線製造株式会社、古河電気工業株式会社等に勤務し、その後昭和電線電纜株式会社取締役等を勤め、前記事故当時同会社顧問をしていたこと、老齢にも拘らず健康体であつたこと、収入は一箇月三万円程であつてこれによつて、原告キヤウとの生活費は勿論、亡笠島和介、原告千秋の生活費を支弁していたこと、原告キヤウは女子学習院を卒業し、明治四十年勝次郎と結婚し、長男和介は東京大学農学部を卒業し、当時神奈川県農産学校の教授の職を奉じ、二男原告重勝は東京大学を卒業し、当時芝浦電気に勤務し、三男原告勝典は早稲田大学を卒業し、日本ビクター株式会社の東京営業所副所長を勤め、四男原告千秋は北海道大学医学部を卒業し、東京大学助手を奉職していることを認めることができるので、この事実と前記認定の諸般の事情を併せ参酌し、被告は慰藉料として、原告キヤウに対し金十万円、同重勝、同勝典、同千秋及び和介に対し各三万円を支払うのを相当と認める。而して和介が昭和二十五年五月十八日(本訴提起後)死亡し、原告喜代、同美絵子、同信和、同義和、同佐絵子が原告主張の通りの相続分をもつて共同相続したことは被告の認めるところであるから、被告は原告喜代に対し法定相続分である三分の一の一万円、同美絵子同信和、同義和、同佐絵子に対し六分の一である各五千円を支払うべきである。次に、

(四)  原告勝典(第二回)本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第十八号証乃至第二十五号証及び同本人尋問の結果によれば、勝次郎の葬儀費用として金一万九千九百九十八円五十銭を要し、原告キヤウにおいてその支払をなしたことが認められるから、被告は同原告に対して損害賠償義務あること勿論である。更に前記九千九百円の不法領得金については前記の通り被害者である勝次郎は被告に対してその損害賠償を求める権利あるところ、原告キヤウ、和介、重勝、勝典、千秋等がその主張の相続分をもつて勝次郎の相続をなしたことは被告の認めるところであり、且和介についてはその余の原告等において相続をなしたことは前記の通りであるから、右権利は相続せられ原告キヤウの相続分は三分の一の三千三百円、原告喜代のそれは十八分の一の五百五十円、原告美絵子、信和、義和、佐絵子の分は三十六分の一の各二百七十五円、原告重勝、勝典、千秋の分は六分の一の各千六百五十円であること計算上明かである。

されば被告は原告キヤウに対し以上合計十二万三千二百九十八円五十銭、同喜代に対しては一万五百五十円、同美絵子、同信和、同義和、同佐絵子に対しては各金五千二百七十五円、同重勝、同勝典、同千秋に対しては各金三万千六百五十円、及び右各金員に対する本訴状送達の日の翌日たること記録上明らかな昭和二十五年三月十九日以降完済まで民事法定利率年五分の割合の遅延損害金を支払う義務がある。

以上の次第で原告等の本訴請求は右認定の限度において正当であるから、これを認容すべきもその余は失当として棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十二条を適用し、仮執行の宣言を附するを相当と認めないからこれを許さないこととし、主文のとおり判決する。

(裁判官 西川美数 藤原英雄 鈴木重信)

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